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【ふなっちゃん通信】 Vol.9 生物の多様性を脅かすもの

「ニホンウナギ」が絶滅危惧種に…(泣)

つい先ごろ、ニホンウナギが絶滅危惧種として国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストに掲載されることとなったニュースが報じられましたね。浜松や三島といったウナギの食文化が盛んな静岡県はもちろんですが、土用の丑の日を前にしてウナギ大好きな私も「もう食べられなくなるのでは?」「価格が高騰してしまうのか?」といった視点からの報道に見入ってしまいましたが、今回のコラムの導入ではちょっと違う視点でみてみたいと思います。

そもそもIUCNのレッドリストに掲載されるということは、この地球に住んでいる生き物が何らかの理由によって減少し、人類の持続的な発展と生活の基盤も脅かしてしまう環境問題であるということです。今回のニホンウナギの場合には危機的減少の大きな要因として、この4つを挙げています。

ニホンウナギが激減してしまった主な原因

1)生息地の損失   2)乱獲   3)回遊ルートの障害と汚染   4)海流の変化

事実、水産資源としてのニホンウナギは、稚魚であるシラスウナギの国内漁獲量が30年前に比べると90%以上減少してしまっています。たった30年でこんなに減ったのだから、そりゃ乱獲やら河川や沿岸の乱開発、あれやこれや指摘されてしまっても仕方のない状況です。

この他にも、様々な要因によって地球に生息している生物がその種(しゅ)の存続を脅かされていて、今や20,000種以上の生物が絶滅の危機に瀕しているそうです。今回ニホンウナギは水産資源としての話ではなく、絶滅を危惧しなければならないほどの生物である、ということが科学的見地に基づいてIUCNレッドリストに掲載されたんですね。つまり地球上の生物の多様性が損なわれてしまっている、ということなんです。

さてここからが本題です。先月のコラムでタンポポの外来種の問題を取り上げましたが、この外来種の問題も、生き物たちの多様性を脅かしているひとつの要因です。あらかじめ断っておきますが、なにも外国から来たすべての生き物たちが悪いなんて言いません。なぜ外国から来たのか、そしてその生き物たちがなぜ日本の生態系を脅かすことになってしまったのかが問題なんです。

みなさんは「外来種」という言葉を聞いてどのような生き物たちを思い浮かべますか? 噛まれるとメチャクチャ痛そうな「カミツキガメ」、淡水の釣り好きに多くのファンがいる「ブラックバス(オオクチバス・コクチバス)」、ラスカルでお馴染み「アライグマ」、世界自然遺産小笠原諸島で昆虫たちを食べつくして問題になっている「グリーンアノール」、ハブと闘ってくれずにほかの生き物たちを食べちゃう「マングース(フイリマングース)」などから、街の花壇や家の庭を彩る多くの園芸種の花たちだって外来種ですし、子どもたちに大人気のヘラクレスオオカブトムシや色鮮やかなグッピーなどペットとして飼われている多くの生き物たちにだって外国の生き物たちがいっぱいいますね。実は日本人に馴染み深い「イチョウ」の樹だって、もともと日本には生育していなかった樹なんですよ。

富士山にもある外来種の問題

そんな外来種のうち、「特に地域の生態系や人の生命・身体、農林水産業へ被害を及ぼす恐れのあるものとして、外来生物法(2004)によって規定された『生きている』生物」を特定外来生物といいます(現在なんと111種類!)。こんな書かれ方をされてしまうといかにも悪者ですが、繰り返しますが何もこれらの生き物そのものが悪いわけではないんですよ。

富士山周辺にも残念ながら多くの特定外来生物が生息してしまっています。漁業権が認められ今でも河口湖・西湖・山中湖で放流を許してしまっているブラックバス、農作物被害を招くハクビシンやアライグマ、野鳥の生息環境を乱しているともいわれるガビチョウ、そして道路の法面緑化と園芸種で今の季節に道端や庭先で美しく咲き乱れているオオキンケイギク、河口湖畔や朝霧高原の牧草地で一大勢力を築き上げているアレチウリなどなど。

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ブラックバス(オオクチバス)の持ち出しは禁止です 2014年6月20日撮影

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西湖畔に咲くオオキンケイギク(左上は拡大写真) 2014年6月20日撮影

ブラックバスについてはあまりにも有名ですが、在来の生物を根こそぎ捕食してしまうだけではなく、他の魚たちが本来食べるものまでも食い尽くしてしまうので、生態系にとって直接的な悪影響が指摘されています。

またオオキンケイギクは私たちの目にはとても美しく、またその生命力の強さから「この花を植えていれば雑草が生えてこなくていい」という理由で園芸種としても非常に人気が高かった時期もあり、かなり広範囲にわたって分布してしまっています。しかしこの花を利用する他の生き物(たとえば蜜や葉を利用する昆虫など)がいないためにどんどん増殖してしまい、生態系への悪影響が懸念されている植物です。また河口湖畔にも多く分布してしまっているアレチウリは、一見するとクズにも似た大きなツル植物ですが、湖畔のヨシ群落を覆いつくしてしまっている場所もあり、ヨシ群落を利用している多くの野鳥たちの生息環境を大きく損ないつつあります。いずれの植物も非常に繁殖能力が高く、放置したままにしてしまうとどんどん増え続けてしまうと予想されています。

富士山クリーンプロジェクトで参加者のみなさんの活動をサポートして下さるNPO法人富士山クラブでは、富士山麓の清掃活動以外にも多くの活動を展開していますが、この特定外来種の問題にももちろん着手しています。オオキンケイギクとアレチウリを中心に駆除活動を2009年から実施しており、これまでに参加して下さったボランティアは2000人以上、駆除することができた外来植物の量は3トンを超えています(2013年度末)が、おそらく清掃活動と同様に今後も取り組み続けていかなければならない問題です。

こうした生き物たちは、何も自力でこの地にたどり着き、その勢力を拡大し始めたわけではありません。特定外来生物をはじめとする多くの外来生物は、人為的に日本国内に持ち込まれたものが、逃げ出したり、意図的に増殖させられたりしたことで、在来種たちに迷惑をかけてしまっているだけなんですよ。つまりそれだけ、その地域の生き物の多様な暮らしのあり方を損なってしまう恐れがあるんですね。ちなみに今回のコラムで紹介した特定外来生物ですが、ちゃんと罰則もありますよ。

 1)無断で飼ったり栽培したりする

 2)生きたまま別の場所に移動する(種もダメ)

 3)許可なく保管する

 4)外国から無断で持ち込む(空港の検疫でひっかかりますよ)

 5)勝手に野外に逃がしたり、植えたり種をまいたりする(これが一番ヒドイ!)

 6)許可を受けてない人にプレゼントする

上記6つのうちどれかに違反したら、

個人の場合懲役3年以下もしくは300万円以下の罰金 / 法人の場合1億円以下の罰金

ですよ。

オオキンケイギクのところでも書きましたが、

 「この花植えると雑草生えなくていいわよ~」

なんて気軽な気持ちでお隣りの奥さんにプレゼントしたり、森の中でたまたま出会ったアライグマを

 「ママ~!とってもかわいいから飼ってもいい~?」「もう、ちゃんと自分で面倒見るのよ!」

なんて微笑ましいストーリーを実現でもしてしまったら、痛~い目にあいますよ。なぜならその行為が、この地球の生物の多様性を損なう(もしかしたら絶滅危惧種をふやしてしまうかもしれない)ことにつながる可能性があるからなんです。

 富士山という私たちの身近なエリアはもちろんですが、この地球にいろいろな種類の生き物が、いろいろとつながりあっていっぱい生きている。そんなのがやっぱりいいですよね。

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