【ふなっちゃん通信】 Vol.11 2014年の富士登山シーズンは…

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日中の富士山頂(須走口) 2014年8月22日撮影

夏のシーズンも過ぎてしまい、すっかり「ふなっちゃん通信」の更新が遅くなってしまい申し訳ありませんでした。今年富士山頂を初めて目指した方、チャレンジはしたことがあるけれどまだ山頂には到達したことがない方、何度も登っているけれど今年もやっぱり山頂に立った方、そして「富士山は遠くから眺めるのが一番さ」と登らないことが大好きな方、様々にいらっしゃると思いますが、2014年の富士登山シーズンも本当に色々とありましたね。世界文化遺産に登録されて1年が経過し、登山シーズンとしては2シーズン目。ユネスコからの宿題に対して様々な点で改善を模索しつつも、内外からの視線もまた着実に醸成されつつある中でのシーズンだったわけです。さて…ちょっとふり返ってみましょう。

マイカー規制期間は延長されました

まずは毎年恒例の物議になるマイカー規制期間の発表から。静岡・山梨両県共に期間を延長しましたね。静岡県側は富士宮口が開山から閉山までの7月10日から9月10日までの連続63日間。開山期間中のすべての日程をマイカー規制しました。そして須走口が週末とお盆の時期などを中心とした40日間でした(御殿場口ではマイカー規制はありません)。また、山梨県側吉田口では、7月10日から8月31日までの連続53日間。これは環境保全のための取り組みという側面からすれば非常に評価される点です。ただ、規制対象に環境に全く配慮されていない旧型の古い観光バスは含まれていないために、黒煙をまき散らしながら通行しているバスのことを考えると、マイカーを規制して何を防止するのかがチョット片手落ちのような気がします。車両性能についても規制を検討する必要があると思うんですよね。環境に配慮したバスの運行の徹底ができれば、もっと素晴らしいマイカー規制に成長できると思います。

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水ヶ塚駐車場の環境配慮型シャトルバス 2014年8月30日撮影

開山時期がずれちゃって…

次に、静岡・山梨両県の開山日については、多くのニュースで報じられたとおりです。今年の積雪が非常に多かったこともあり、静岡県側の山開きが7月10日だったのに対し、山梨県側は例年通りの7月1日。「別にいいじゃん」という声もありますが、山梨県側の吉田口ルートは本八合目から上が須走口と合流しているため、山頂の環境省設置トイレや山小屋が開いていません。つまり吉田口から7月10日までの間に登山をした登山者は、頂上付近ではトイレが利用できないんです。これで何が起こるかというと、トイレの近くなどでトイレを済ませた人のし尿やトイレットペーパーなどが、山頂に散乱してしまうという由々しき事態です。これを何とかしようと、吉田口五合目で携帯トイレを配布したのですが、新聞報道では配布数6,580個に対して回収がたったの33個。回収率は0.5%でした(7月1日~7月7日)。この期間、私は須走口の山頂にいけなかったので実際の様子を確実にお伝えすることはできませんが、お山開きの日を両県で一緒にできれば、こうしたヘンな差は生まずに済むのになぁと思ってしまいます。歴史的に継承していることはもちろん大切ですし、それがあるからの文化遺産でもあるわけですが、登山者の安全や快適な利用についてもう少し歩み寄れないものかと思ってしまいます。ちなみに、閉山(冬季閉鎖)も静岡県側では9月10日であるのに対し、山梨県側では9月15日となっています。

「入山料」と言ってはいけないんだそうです…

そして今年から、正式に「富士山保全協力金」の徴収がスタートしましたね。一人1,000円を「任意」で。山梨県側のデータしかないのですが、7月1日の山開きから8月1日までの1ヶ月間で、登山者の62.4%にあたる45,271人が協力し、約4,370万円が集まったそうです。徴収方法に少し工夫が見られ、五合目やシャトルバス発着場所での徴収だけではなく、事前にネットやコンビニでの支払いが可能となったことも、注目されるべきことです。

ただ…最も肝心な「一体何に使われるのか」が未だに不明瞭な点が多すぎですね。昨年の試験運用でも、「徴収員の人件費」にずいぶんと費やされているという批判もありました。私的見解を述べさせてもらうと、富士山という場所から恩恵を受ける者がその保全のために「受益者負担」としての保全協力金を支払い、支払うことで様々なサービスを受けるべきだと思います。登山をしてその自然を楽しむのであれば、そのために支払う(もしくは強制的に徴収される)べきで、その代わりに安全な登山のための登山道の整備や、快適な登山のためのシャトルバス・トイレなどの設備利用、登山道表示やパンフレット等にも使われてしかるべきでしょう。その延長上に、自然環境保護活動などへの運用だってあると思います。その証として、バッジをもらえるのであれば誇らしくもあるのですが…なんだかコレクションアイテムを意識して各登山道で違うバッジが配布されていたことにはチョット残念ですね。

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富士山保全協力者証バッジ(左が富士宮口、右が吉田口)

富士山でもWi-Fi使えます!

多くの山小屋でWi-Fiが使えるようになったようですね。登山道の通信環境も非常に整ってきているようです。とはいえ、富士山はとても電池消耗の激しい山です。寒いんですから携帯電話等の電池は急速に減っていきます。予備のバッテリーを持って行くとか、登山中必要のない時には電源を切っておくなどの対策を忘れないようにしないといけませんね。もちろん、登山中の「歩きスマホ」なんてもってのほかです(苦笑)

重大問題の落石事故がありました

お山開きのニュースの影で、山梨県側五合目では7月1日に落石(縦約3メートル、横約1・5メートル、­高さ約1メートル)が見つかりました。幸いこの落石に巻き込まれた登山者などはおらずホッとしたものですが、2009年7月に富士宮口五合目で発生した落石死亡事故のことを考えると、やはり恐ろしいニュースでした。

しかしそれ以上に、この夏最も私が震撼したのは8月9日に九合目付近で発生した落石事故です。頭にきました。だから誰がなんと言おうと、どんな事情があろうと書きます。

落石事故は8月9日未明、須走口と吉田口の下山道『付近』で発生し、『ツアー登山者』の女性1名が『登山中』に落石を受けて頭蓋骨骨折の重症。命に別状なかったことが幸いなのかもしれませんが、『 』が問題です。事故は登山客の多い土曜日の未明に発生していることから、登山道がいつものようにヘッドランプで大渋滞していたことは容易に想像ができます。そこにツアー登山で登っていた登山者ですから、登山ガイドもついていました。

そのガイドの判断で(と、新聞では報道されていましたが)本八合目から登山道ではなく、下山道付近にあるブルドーザー資材搬入路(いわゆるブル道)を登山中に、落石によって起こった事故でした。登山道や下山道の管理は県ですが、ブル道の場合は県は管轄外で、管理は山小屋などで作る組合が行っている場所です。もちろん登山道ではないので登山者の安全上の対策が講じられている場所ではなく、立入禁止が当たり前でそのための表示もされているわけですが、今回の事故はここで起きてしまいました。

ブル道に関してはユネスコからの宿題にも上がっています。そこで起こった、

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という今年の総括では取り上げられざるを得ない、非常に由々しき問題です。この太字のキーワード、絶対試験に出ますよ! イヤイヤ、私は富士山の世界文化遺産関連ではこれからの大切なポイントになると思いますので、チョット覚えておいて下さい。

そんなこんなで、天気も悪かったので登山者数は減りそうです

この原稿を書いている9月1日現在、まだ最終的な登山者数の発表はありませんが、環境省が発表した中間報告(7月1日~21日)では、富士山八合目における登山者数は前年の同時期と比べて約2.6万人減少した約5.3万人(前年比-33.2%)、山梨県が8月25日に発表した推計でも、吉田口の登山者数が20万人を切り、18万人程度に留まるのではないかとの報道発表がありました。

原因としては、残雪の影響で山頂までの登山道の開通が例年より遅れたルートがあったこと、梅雨明けまでに登山に適した天候の日が少なかったこと、マイカー規制期間が延長されたこと、いわゆる「弾丸登山」の自粛要請が功を奏していること、富士山の世界文化遺産登録によって様々な「規制」「制限」といった表現がなされ、登山者の富士登山に対する自制が働いたのではないかという推測、などなどの理由が取り沙汰されています。いずれにせよ平成20年以降の登山者数が30万人前後で推移している富士山では、今年は大幅に減少する見込みとなっています。

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もちろんこれには賛否両論。環境保全的な立場で言えば当然「オーバーユースが解消されてきた」と期待を込めるでしょうし、経済活動的な立場で言えば当然「売上に直接的に影響して死活問題だ」と嘆き怒ることでしょうね。

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ここで1枚目の画像に戻りますが、「平日・日中」の須走口山頂の様子です。私は夜の富士登山があまり好きではないので、富士山頂を目指すときには早朝に登り始めてお昼すぎに山頂、夕方までに下山というスケジュールで行くのですが、この日も登山道で渋滞にあうことなどなく、快適に雲海を眺め登山者同士で挨拶を交わしながらボチボチと登りました。それにしても確かに「登山者が少ないかな…?」と、登山者の少なさを感じましたよ。

さて、今年の富士登山シーズンのニュースで、みなさんが気になったことはありましたか?

 

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