【ふなっちゃん通信】 Vol.15 富士山クリーンプロジェクト2014 ご参加ありがとうございました!

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朝焼けに染まる富士山(2014年11月13日撮影)

去る10月25日に、今年の富士山クリーンプロジェクト2014は、多くの参加者のみなさんと回収することのできた多くのごみ、そして多くのハプニングやサプライズのうちに幕を閉じましたね。私も本当は富士山クラブのスタッフとしてみなさんの活動をお手伝いする予定でおりましたが叶わず、代役に「ふなぼう」に活動に行ってもらったんですね。来年も10月にこのプロジェクトが開催されることが当日に発表されましたので、来年こそはぜひみなさんとご一緒できるように心も体も準備万端で過ごしていきたいと思います。
そしてこの「ふなっちゃん通信」も、継続していただけるということですので、1年間色々と書き続けていきたいと思いますので、どうぞよろしくお付き合い下さいねっ!

…そんなこんなですでに活動終了から1ヶ月が過ぎてしまいました(汗)

産業廃棄物の不法投棄について

さて、今年の富士山クリーンプロジェクトでは、昨年に引き続きいわゆる「産業廃棄物」の撤去活動がメインとなりました。昨年の大量のタイヤの未処理分を撤去し、午後の活動では建築廃材とも思われる大量のごみをみなさんの力によってかたづけることができました。富士山クリーンプロジェクトもそうですが、活動にご協力いただいているNPO法人富士山クラブでも、ここ数年は産業廃棄物の撤去活動に非常に力を入れています。

そもそも論ですが、富士山周辺は静岡・山梨両県を問わずこれまでも業者による多くの産業廃棄物の不法投棄があった場所です。ここ数年は数が少なくなってきたとの発表もありますが、発見できていないものも含めるとまだまだ根絶できていません。

2014年もあと1ヶ月となった今日現在で、富士山麓で起こった今年の不法投棄に関するニュースで最も大きかったのは、静岡・山梨の県境にほど近い場所に放置された、放射性セシウムに汚染された木材チップの不法投棄でした。いたずらに不安をあおるようなことも書きたくはありませんが、もしかしたら静岡県側にお住いの方にはあまり伝わっていないかもしれませんので、以下に簡単に経緯をまとめておきます。

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放射性セシウムに汚染された木材チップの不法投棄現場(2014年12月6日撮影)

報道されたのは今年3月の中旬。静岡県との県境である富士河口湖町富士ヶ嶺地区の民有地に、空間線量率が許容量の目安とされる毎時0.23マイクロ・シーベルトを上回る毎時0.66マイクロ・シーベルトの木材チップ総量36立方メートルが放置されていたというものでした。民有地の所有者は堆肥のサンプルを無償提供するということで受け入れたものの、量が多かったので引き取りを依頼したが連絡が取れず、そのまま約1年間放置されてしまったそうです。放置された木材チップ周辺の空間線量率は、山梨県が基準としている毎時0.03〜0.07マイクロ・シーベルトの約10倍。ただ、周囲に住民がいないことや、最も近い敷地境界付近の道路での空間線量率が毎時0.06マイクロ・シーベルトと低かったために、住民や通行には支障はないとして今日現在残置されたままとなっています。この事件は山梨県だけの話ではなく、福島県、滋賀県、千葉県や栃木県とわかっているだけでも複数の県にまたがった大きな事件のために簡単に撤去することもできず、山梨県によって当面の安全措置(立入禁止・廃棄物の被覆等)がとられ、毎週空間線量率の計測が行われているんです。

すっかり最近では報じられなくなってしまいましたが、最新の11月27日の計測でも「異常なし」とのことです。すぐに何とかしてほしいというのが私たち一般市民の願いでもありますが、排出者(簡単に言うとごみを捨てた人、その処理を依頼した人、運搬した人などなど)の特定が難しかったり、わかっていても撤去能力がない(つまりお金がない)、係争中、など様々な理由で産業廃棄物の不法投棄というのはなかなか難しいんです。

「捨て得」をさせないために私たちができることはあるか

業者が不法投棄をする理由はたったひとつ、「得をするから」です。処分費用をもらっておきながら、実際には処分を適正に行っていなければまるまるそのお金が手に入る。事実、上記の放射性セシウムに汚染された木材チップも、国が定める1kgあたり8000ベクレル以下の放射能汚染廃棄物(山梨県による測定値が2600〜3400)なので国が処分する対象にはならず、廃棄物処理法上では排出者が処分しなければなりません。その際、この木材チップの放射能汚染を賠償する電力会社から4億円もの処分費用が支払われているにも関わらず、廃棄物処理のブローカーともいうべき輩によって処理が適正に行われずに、富士山麓に捨てられました。

このような大きな話でなくとも、処分費用を懐に入れようと建設廃材やタイヤ、自動車や家電製品、パソコンなどは不法投棄されるわけです。個人の場合であれば「お金がかからないように」業者の場合であれば「お金が儲かるために」、つまり「捨て得」になるわけです。

今回の活動現場に捨てられていた建設廃材などはどれもかなり古く、それこそ数十年前に捨てられたものがそのまま発見されずに残っていたものでしょう。業者による悪質な不法投棄は現行犯での発見はもちろん、なかなか表面化しづらいものです。しかし、決して捨て得を許すわけにはいきませんよね。すでに捨てられているもの、捨てられてしまったものは、富士山麓ではこのプロジェクトのように多くのみなさんのご参加や行政による協力によって、対処することが可能となってきました。これだって10年前には考えられなかった素晴らしい進歩です。

では未然の防止策について、私たち市民にできることはあるでしょうか?

残念ながら決定的な防止策を打ち出すことができているところは未だにありません。そりゃそうですよね、業者による不法投棄と聞けば反社会的勢力の影がちらついたりしますし、ごく普通に暮らしている中ではほとんど関わりのない話です。ですが「捨てられづらい環境」は作れるはずです。これまでのごみも、今現在捨てられているごみであっても、多くの人々が富士山をきれいにするために地元の人間が立ち上がっている、汗をかいてごみを拾い続けている、そんな空気をこの富士山のエリアでは作り出すことができはじめています。

そして拾うごみがなくなった時からがきっと次のステージ。その先にどのような防止策を作り出すことができるのかは、残念ながら今の未熟な私にはまだまだ見い出せていませんが、「拾うごみをなくすことができた多くのボランティアの力」は、きっと次のステージの大きな原動力となると信じています。

その日が来るまで、つまり拾うごみがなくなってしまうその時まで、このプロジェクトを含めどうぞご協力をお願いしますっ!

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