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【ふなっちゃん通信】 Vol.18 富士山麓の神秘の森 青木ヶ原樹海

みなさんは「青木ヶ原樹海」という言葉から、どんなイメージを持たれますか?

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青木ヶ原樹海の森の中(2015年4月24日撮影)

「その森に一度入ったら二度と出られない」「方位磁石がクルクル回る」「行方不明になれる森」「心霊スポット」「富士山の森って全部青木ヶ原樹海」「魔界の入口」「不法投棄の温床」などなど、残念ながらネガティブなイメージをあげたら枚挙にいとまがありません。言葉を選んだとしても、良くて「神秘の森」あたりです。

ここ十数年、青木ヶ原樹海内でそのすばらしさと美しさをしっかりと再確認してもらおうと、エコツアーや野外活動のプログラムが数多く行われるようになったり、あらぬことを考えて森を訪れようとする人への声かけ運動などが広がり、おかしなイメージの払拭が着実に進みつつありますが、一般的にはまだまだと言わざるをえません。

私もこうした活動を始めた15年ほど前から、当たり前のように日々青木ヶ原樹海の中に入って活動をしてきています。多い時には昼夜を問わず連日青木ヶ原の森の中にいたりすることもまったく珍しくありません。もちろん現在でもガイドウォーク系のプログラムを実施していることもあるので、このページであまり青木ヶ原樹海について書いてしまうとネタバレになってしまうのですが、今回はちょっと富士山の生み出した神秘の森のことについて書いてみました。

とにかく広いんです! …ちゃんと出られますけどね。

よく「東京ドーム何個分」って言い方の例えがありますが、あれってよくイメージできないのは私だけではないですよね?青木ヶ原樹海の面積約30平方キロメートルは、どうやって表現するとその広さが良く伝わるんでしょうかね?いつも悩みます。約30平方キロメートル、約3000ヘクタール、約900万坪、東京ドーム約640個分、甲子園球場約758個分、広島県の厳島神社のある宮島とほぼ同じ広さ…と、まぁとにかく広いんです!広いんですよ!!それだけの広さが全部森なんですから、一度入ったら出られないだとか迷ってしまうとかのイメージにもうなずけます。

今からおよそ1200年前にもなる西暦864年頃から富士山北西部の火口で大量の溶岩を流出する噴火がはじまり、その溶岩流の上に新たに生育した森が青木ヶ原樹海です。原生林的なイメージもあるでしょうが、昔から人々に森林資源として利用されてきたいわゆる二次林です。現在でも昔の炭焼き跡や木材の搬出路なども残っています。ですから、富士山の他のエリアと同じく登山道や林道がかなり縦横無尽に通っており、実はしばらく歩くと必ずどこかの道に出られるんですよ。噴火口から流れ出た溶岩流で広大な面積が一度にリセットされた森なので、生育している植物がどこを歩いてもほぼ同じで見たことのあるような景色だったり、溶岩でデコボコしているためにまっすぐ歩きづらかったりするだけで、ちゃーんと青木ヶ原樹海からは出られます。だってほら、ふなっちゃん何千回も青木ヶ原に入ってますがちゃんとみなさんの前に出てくるでしょ?(笑)

まだまだ進化している森なんです! …進化の過程だってちゃんと見られますよ。

ところで森林って進化するのを知っていますか?なーんにも生えていない土もない溶岩の大地に、1200年の月日は豊かな森を成長させてくれました。はじめは本当にただの溶岩台地が広大に広がる、いわゆる焼け野原が広がっていたそうです(私は見ていないですけどね)。その後パイオニア植物とも言われるマツなどの仲間(青木ヶ原周辺では主にアカマツ)が生育して、その後に現在優勢種となっているモミやヒノキ、ツガなどの常緑針葉樹が生えてきて、現在の姿とほとんど変わらぬ姿に進化しました。土壌はまだまだ豊かではないので、生育している樹木も非常に倒れやすく、倒れて朽ちることで新たな土壌のもとが作られていきます。

現在の青木ヶ原樹海を歩いていると、そこかしこで倒れた樹から別の樹が生えはじめている様子を観察することができますが、これをちょっと難しい言葉では「倒木更新」と言います。そんな生物多様性のダイナミックな進化の過程が観察できるのも、現在の青木ヶ原樹海の素晴らしい魅力です。

森は地球上の緯度や気候など様々な要因によって進化のゴール(クライマックス)が違いますが、とある学者さんのお話ではあと2000年くらい青木ヶ原樹海の自然がちゃんと保全され続けて進化を遂げていくと、広大なブナ林帯にまで進化するそうですが…まぁその行く末は未来のみなさんにお任せしましょう。今の私たちにできることは、この森を楽しみつつ美しい状態でしっかりと次の世代に引き継ぐことですよね。

そんな広い樹海だからこそ…ミクロハイクなんてどうでしょう?

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美しいコケの上を歩く小さなクモ(2015年4月24日撮影)

 みなさんは「ミクロハイク」ってご存知でしょうか?アメリカで生まれたネイチャーゲームという自然体験プログラムのひとつなのですが、要するにわたしたち人間の普段の視点を変えて、自然の中の小さな小さな世界を見てみるというものです。特別用意しなくてはいけないものもありませんが、虫めがねがあればなお楽しいですね。自然の中で寝そべったり地面に這いつくばったりなんてなかなかできないですよね?それをやってみるんです。それこそ昆虫たちの目線で、森の中をあらためて見てみると面白い発見があるものです。

ひのき

ひのきぼっくり(リスがこれでサッカーしてたりして…)

上の写真は、松ぼっくりならぬ「ひのきぼっくり」です。森の中に散らばって落ちていても「茶色いコロコロがたくさん落ちてる」くらいの印象ですが、緑のコケの上にひとつだけ転がっていたりするのをミクロハイクしてみると…さながら森の中で開催される小型哺乳類対抗サッカーワールドカップの公式球のように…見えませんかね?? 私にはそう見えましたよ!

コケの上はまさに「森の中にある小さな森」です。今回の2枚目の写真でもおわかりかもしれませんが、種類にもよりますがコケ類は至近距離で見ると非常に美しく、自然の造形美にはただただ驚かされます。歩いて通り過ぎているだけでは全く気がつくことのない小さな小さな生き物たちも、コケの絨毯の上をチョコチョコと歩いていたりします。こうしたことは、なにも有料のテレビチャンネルで最新のカメラで撮影されたものではなくても、みなさん自身の目でみることができるんですよ。しかも富士山や青木ヶ原樹海といった特別な場所だけではなく、みなさんがお住まいの近所にある森の中でも、もちろん見ることができます。

新緑の森の中は、あらゆるものに命の力がみなぎっています。そんな広大な世界の中で、小さな小さな世界にちょっと目を向けてみるのもおもしろいと思いますよ!

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