【ふなっちゃん通信】 Vol.8 春といったらやっぱりタンポポ

カントウタンポポ
(富士山クラブもりの学校の校庭に咲くカントウタンポポ 2014年5月9日撮影)

3月下旬ごろにダンコウバイの黄色い花が咲き始めると、富士山麓の遅い春がようやく始まります。日本中が桜の見頃、花見のスケジュールのことで話題が持ちきりの頃は、まだ富士山麓では桜のつぼみは固く、ゴールデンウィーク直前から連休中にかけてソメイヨシノは見頃を迎えます。関東近縁の方々にとっては、地元で桜を見終わっても「富士山に行けばまだ花見ができる」というのが桜の楽しみ方のひとつにもなっています。

時を同じくして、野山はもちろん市街地のコンクリートの隙間などからも顔を出す、私たちにとって非常になじみのある春の花、タンポポが咲き始めますね。子どもの頃には花飾りを作って遊んだり、茎を折ると出てくる白い液体をさわって「臭っ!!」とズボンで拭ってお母さんに怒られたり。タンポポが食べられるなんてことを知って、春の味に舌鼓をうつことを覚えるとちょっと大人になった気がしたりと、みなさんにもいろいろと思い出があることと思います(ちなみにあの白い液体はタンポポの「乳液」で、タンポポの身に傷がついたりしたときにばんそうこうの役割をするゴムの成分が入った液だそうです。人間の顔に塗ってもただ臭いだけですよ)。

タンポポの外来種問題?

さてそのタンポポですが、昔から日本にある在来種のタンポポ(和タンポポ)と、外来種のタンポポがあることは結構有名になりましたね。津々浦々に咲いているタンポポが実は外来種のタンポポがほとんどで、和タンポポはその数をどんどん減らしてしまっている、なんて話もよく聞かれるようになりました。富士山の周辺でも野山や空き地に咲いているタンポポのうち、和タンポポを目にする機会はあまりないと言っても過言ではありません。

そもそもタンポポというのは、世界中に広く分布しているキクの仲間です。日本では約20種類が確認されていますが、大きく分けると先ほど書いたように昔から日本で生育している在来種と、明治時代以降に食用で移入されたと言われている外来種(セイヨウタンポポが有名ですね)とのふたつに分けられます。富士山麓でもどちらも目にすることができますが、やはり圧倒的にセイヨウタンポポのほうが多いようです。一説によると、日本に咲いているタンポポの実に80%は、外来種のタンポポだとも言われています

このふたつの見分け方は簡単で、保育園児くらいになればだれでも見分けることができます。基本的には、咲いている花びらがまとまっている部分(専門的には総苞外片といいます)が、まとまっているかそり返っているかだけ。下の写真や図を参考にしてみて下さい。

タンポポ在来種と外来種の違い

 

(在来種(左)と外来種(右)のちがい 2014年5月9日撮影)

日本のタンポポと外国のタンポポの簡単な見分け方

 

タンポポ在来種と外来種の見分け方

要するに、和タンポポ花びらの裏側がまとまった上向きになっていて、外来種だったらそり返っています。外来種の場合だと種の色でさらにわかりやすく分けられるので、ところどころで綿毛になり始めているこの季節がよくわかりやすいんですね。

ヤッパリ ガイコク ノ モノ ハ ツヨイ ネ~ッ!!

和タンポポの場合、タンポポの綿毛になるのにはハチなどの昆虫によって受粉をされることが必要なわけですが、セイヨウタンポポに代表される外来種のタンポポは違います。なんと!たった一輪だったとしても自分だけで種(たね)が熟してしまうのです。専門用語では「単為生殖(たんいせいしょく)」と呼ばれますが、そのために非常に繁殖力・適応力が強く、都市部などで爆発的にその数を増やしてきた経緯があります。セイヨウタンポポはその繁殖力の強さなどから、日本生態学会が定めた「日本の侵略的外来種ワースト100」に選定されてしまっているほどです。

そしてこの二つの分類に、最近になって新しく確認されているのがハイブリッドタンポポです。ハイブリッドというとなんだか環境にいいようにも聞こえますが、決していいものではありません。繁殖力の強いセイヨウタンポポたちの花粉が和タンポポたちに受粉されることで起こってしまう交雑種ですから、日本の生物多様性を脅かすことにつながってしまいます。正確な種(しゅ)の分類が未だによくわかっていないので、見分け方もまだまだ詳しい研究がされつくされていないようですが、「総苞外片が和タンポポっぽくまとまっているのに、下向きにそり返っているものがいくつもあるという非常に中途半端なヤツ」のようです。ハイブリッドタンポポが確認されている地域は結構増えてきているようで、富士山麓でも数か所で見つけることができます。

和タンポポは、昔ながらの自然が色濃く残っている場所にはまだちゃんと分布していて、外来種のタンポポが多いのは近年開発された土地に新しくセイヨウタンポポたちが入り込んできた。そして昔ながらの場所との境でハイブリッドタンポポが増えてきている、と言うことができるようです。

静岡県側はあまり詳しくなくて申し訳ないのですが、山梨県にある富士山クラブの本拠地、富士山クラブもりの学校の校庭にはシロバナタンポポもカントウタンポポも咲いています。また山梨県甲府市の市街地にほど近い武田神社の周辺にも、たくさん咲いています。昔ながらの自然がまだ残っている証拠ですね。ぜひ今度の週末にでも観察しに行ってみてはいかがでしょうか? そしてぜひ、みなさんのご自宅の庭や近所の公園など、タンポポが咲いているところでちょっと花を裏返してみて下さい。もしも和タンポポが見つけられたなら、昔ながらの自然がまだ残っていることにちょっとうれしさを感じることができますよ。

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